桜のトンネル

住宅街にある桜のトンネル

国道171号線から箕面駅に向かって南北に延びる道路はいつも車で混んでいますが、その道の一本東側に、それと並行して南北に住宅街を走る道があります。あまり詳しくは書きませんが、箕面に越してきてほどなく見つけたこの道は、古い桜の木が道の両側に立ち並び、木の枝が両側から道の上を覆うようにトンネルを作っています。春になったらきっと桜の花がきれいに違いないだろうな、とワクワクしたものです。それほど人通りの多くないこの道を、春うららかな日に、そっと一人で歩いて桜の花を独り占めしてみたい。この道を通るたびに、そんなことを考えて密かににんまりとします。

そろそろ桜の開花情報がニュースを賑わすようになってきましたね。でも街中を散策していると、つくづく日本人は桜が好きなんだなぁと実感するほど、あちこちに桜の木があります。前に住んでいた豊中桜塚の桜塚墓地周辺も、隠れた桜の名所でした。夜に墓地のそばを通ると、街灯に照らし出された桜の花が続く下を歩き、まるで映画の世界に迷い込んだような幻想的な気持ちになったものです。とっても贅沢なひとときでした。

今年も昨年に続きコロナが流行する中で、密にならないように「桜の名所」と呼ばれる場所へ出かけることを控えるように呼びかけられていますね。こういう時こそ、自分だけがそっと楽しめる桜の場所を見つけてみませんか?

楚々としてうつむく

スノーフレークという多年草がちょうど咲き始めました。ヒガンバナ科に属する球根草です。一度植えると何年もの間、毎年春に花穂をあげてくれます。

裾に大きな斑点柄を絶妙にあしらった、ぼんぼりスカートのようなユーモラスな姿です。すずらんの花によく似ていて、すずらん水仙とも呼ばれたりします。

それにしてもこの、楚々としてうつむく花の姿、だれがこの姿をデザインしたの?と不思議になるほど、物思いに耽って首をそっと垂れている清楚な女性の姿を思い起こさせてくれる絶妙な姿をしています。

スノーフレークとは、雪片、雪のかけら、という意味です。風にゆらゆらと揺れる純白の花たちの連なりを、ひらひらと舞い降りる雪片にきっと重ね合わせて見たのでしょう。

春は、黄色から

冬の眠りから目覚めたように顔を出すクロッカスの花。くっきりとした色合いは新しい季節の到来を宣言するかのようです。

春の色というと、多くの人は桜の淡い桃色をイメージするでしょう。でも、春は黄色から始まるんだなと、いつも思います。

年が明けて、私が最初に目にする花は、ロウバイの淡いレモン色です。そしてサンシュユの、線香花火のようなカタチをした黄色の花。やがて水仙の花穂が立ち上がり、中心の黄をそっと覗かせます。特に私は箕面に越してきて、お庭に結構サンシュユの木が植えられているんだなと、最近花が咲いているのを見て知りました。

低い雲が垂れ込める日本の冬の日々、その陰鬱なモノトーンの風景にあらがうかのように黄色い花をちらっちらっと開く木々たち。これらは偶然なのか、それとも自然の神さまの大いなる意図なのでしょうか。やがて張り詰めた寒気がやわらぐ日がぽこっと出ると、畑の菜の花が一気に開花し、庭のミモザアカシアも一斉に咲き誇り、早春の黄色祭りがクライマックスに達します。

春は黄色から。暗い冬の空を吹き飛ばすように、自然は設計されているのだと思います。